96人が本棚に入れています
本棚に追加
手紙を読み終えた私は、カレンに電話した。
「マイカ、どうしたの?」
「妹が死んだの」
驚く彼女に「正確には三年前なんだけど、今日やっと受け入れたの」と付け加える。
彼女は慰めの言葉を口にしてくれた。
「今日、なんとなく様子がおかしいなと思っていたのよ。待ってて、子供を寝かしつけたらゆっくり話が聞けるわ」
「ああ、いいの。今日でなくても」
遠慮する私に彼女は何度も確認し、結局は明日、金曜日にリモートで飲み会することに話がまとまった。
「じゃあ、温かい飲み物を飲んで、今日は早く寝なさい。ぐっすりとね」
「ありがとう、おやすみなさい。カレン」
私は電話を切り、温かいココアを入れた。
冷えた体に染み込んでいく。
姉妹でなくて、友達だったらまだうまくやれたのだろうか。
距離を置ける存在であったなら、真由、あなたの輝きを見守る優しさが持てただろうか。
わからない。どんな難解な論文よりも難しい。
きちんとわかる前に、真由はいなくなってしまった。
生まれ育った町より、もっと遠く、永遠に手の届かないところに。若く可愛いまま。
それは少しずるい気もしたけど、そう思った私の心の嫌な部分が有ることが、今は嫌ではなかった。
「死ぬのが早すぎたのよ……」
つぶやきは狭い部屋に消えていった。
きっとこのはっきりしない気持ちのまま、また来年も深く彼女を想うだろう。
寝て起きて、朝が来る。
今日も飛行機は飛んでいる。だけど私は乗れない。
いつかこの感染症が収束し、堂々と日本に行ける日が来る。
そうしたら、真っ先に妹の墓参りに行くと決めている。
最初のコメントを投稿しよう!