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兄弟で、女体化してデートなの
月曜二十一時。この時間は兄さんとトレンディドラマを見る時間。正直、僕が見たい訳ではないが、兄さんが一緒に見てくれと言うので仕方なく見てる。
「くーーっ! たまんないね! こんな恋愛してみたいぜ! あーんな風に女の子抱きしめたい! こうだよ! こう!」
兄さんが僕を抱きしめようとしてくるので兄さんの額に手を当てて阻止する。
「なんで!? 家族を抱きしめたって問題ないじゃん!」
「家族でもいきなり変な理由で抱きしめられたらイヤだから」
むぅと兄さんは悔しそうな顔を見せたが、すぐにニタリとニヤけて見せる。
「ちゃんとした理由があればいいんだな! 実はいいもの見つけたんだ! じゃーん!」
兄さんが一緒に座ってたソファの陰から取り出したるそれはパッケージに女体化チョコレートと書いてあった。
「また変なもの……」
「変じゃない! レビュー評価4.6のまじモンだよ! これを食べて恋人ごっこしよう! 俺は一度でいいからデートしてみたいんだ!」
イヤな予感がする。兄さんに無理矢理女体化チョコレートを食べさせられて、お前可愛かったんだなとか言われて、一線を越えようとする姿がありありと浮かぶ。
「僕に……、食べさせる気?」
「ああ! でもその前にお兄ちゃんが食べる! だってさ、長男ってだけで色々我慢しなくちゃならないんだぜ? たまに女の子になってちやほやされたい!」
兄さんは弟の僕が言うのも何だけど、イケメンだ。ただ、それを上回る残念さがイケメン度を根こそぎ奪っていく。
「明日、恋人ごっこでデートだ! 実はもう女の子の服買ってんだよね!」
変なとこで用意周到だったりする。多分、彼氏役の僕の服を買ってるんだろうなぁ。やりたいことには出し惜しみしないから。言い出したら聞かないことも分かってる。つい、ため息が出る。
「一回だけだよ?」
「何言ってんだ! 俺が女の子のときと、広羽が女の子のときに二回に決まってるだろ! 大好きなお兄ちゃんのためにお願い! ね?」
両手を胸の前で組み、頭を傾げてキラキラした目で僕を見るが、兄さん、別に可愛くないから。
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