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「いいよ。兄さん」
兄さんが女体化した僕に着せるために用意した服をまとい兄さんを呼ぶ。
ガチャリとドアが開く。僕の女体化した姿を見た兄さんは固まってしまった。
「兄さん? どうしたの?」
「か、か、か、可愛い! 本当にこんな子とデートできるの!? 生きてて良かった!」
女体化した弟にそんな反応する? まぁ喜んでもらえたなら良かった。ちょっと優越感にも浸れるし。
「仕方ないなぁ。もうデート行く? コンビニでサンドイッチ買って公園で食べようよ」
「公園デート! お兄ちゃんの憧れシチュエーション! 行く行く!」
「はい決まり」
僕は兄さんの腕に腕を絡ませる。兄さんの表情は、へにゃりと砕けたがすぐに表情をキリッと直す。
「では行こうか? 仔猫ちゃん……」
仔猫ちゃん? 仔猫ちゃんってマジで言う人いるの? 兄さん痛いよ……。激痛だよ……。
「あはは……。翼くんって面白いんだね……」
「はは。広羽ちゃんも可愛いよ。こんなに可愛い仔猫ちゃんはそうそういない……」
やべぇ。やばい。仔猫ちゃんを連発してくる。ドヤ顔してるが超ダサい。てか僕が弟で良かった。他人にやったらドン引きされるよ。僕もドン引きしてるけど。
「あはは。嬉しいけど、仔猫ちゃんはやめてね。恥ずかしいから」
また、兄さんの顔がへにゃりと砕ける。チョロい。チョロ過ぎるよ。
そのまま、外に出てコンビニに向かう。流石に夏休み最中の朝六時は人通りも少ない。兄さんが変なのはいつもだけど、この姿を知り合いには見せたくないから丁度いい。見られたとしても多分、僕だとは分からないだろうけど。あと兄さんが女の子の歩いているのは信じないか悪い夢だと思うだろう。僕ですら内心悪夢だと思ってるから。
コンビニについてサンドイッチと飲み物を選び、レジに向かう。
「お願いします。僕の彼女可愛いでしょう?」
兄さんは余計な一言を付けて商品を店員に差し出す。
「そーですねーー」
店員さんも関わりたくのが丸見えだ。
「七百八十円になりまーす」
「あの僕の彼女……」
「大切になさってくださーい」
この店員やるな。兄さんみたいのは相手にしないのが一番なんだよ。弟の僕が言うんだから間違いない。弟の僕が相手にしないって無理があるけど。
「ありがとーございましたー」
店員さんは手早く商品をレジ袋に入れて手早くレジを売った。ここのコンビニよく来るけど、この店員さん、こんなに速くレジ打てたんだ。いや、兄さんだから急いだのか?
店の外に出ると兄さんはため息を吐いた。
「やれやれ。広羽ちゃんの可愛さを分かってくれないとは……」
いや絶対そうじゃない。兄さんに関わりたくなかっただけなの丸分かりじゃんね? 当人は分からないのか……。
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