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その男の子はすごく元気で、大変前向きで、とてもしっかり者でした。
男の子とバクは、いつもいっしょでした。
散歩をする時も、昼寝をする時も、いつも二人で過ごします。
静かな時間を明るく塗り替えてくれたのは、男の子とのおしゃべりでした。
「海を泳いで山を越えた先には、何があるのかな」
「きっと、なんにもないよ」
「ううん、きっとなんでもあるよ」
バクはおどおど相槌を打ってばかりでしたが、おしゃべりはいつも楽しくて、心がうきうき弾んできます。
何にもできやしないと思っていたのに、男の子の話を聞いていると、本当に何だってできる気がしてくるのです。
「いつか行ってみたいね」
男の子は目を輝かせて、明るい夢を語ります。
その夢はきらきらしていて、そしてとても、おいしそうでした。
ある晩とうとう我慢ができなくなって、バクは男の子の夢を食べてしまいました。
ばくんと一口かじってみると、ぱちんと弾けたみたいに男の子はいなくなっていました。
自分のしたことに気付き、バクは嘆き悲しみました。
「ぼくは最初からずっと、ひとりぼっちのままだったんだ」
誰かとお話をして、楽しく笑い合って、一緒に過ごす。
全部全部、バクの思い描いた幸せな夢でした。
バクはわんわん泣きました。誰もその声に返事をくれはしません。
こうしてバクは、本当にひとりぼっちになりました。
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