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「あれ、先輩また会いましたね」
そうにっこり笑いかけてくれたのは、ひょんなことで知り合った同じ高校一年生の女の子だった。
春の球技大会で同じ卓球を選んでおり、男女は別々だが会場は同じで仲良くなった。同じクラスの女子たちを応援しているとき、ちょうど近くに彼女と友人たちがいたのだ。
「先輩、卓球部だったんですか?お上手ですね」
最初に話しかけてきたのは彼女の方で、僕が返事に困っていると、
「す、すみません。たまたまさっき試合を見たので」
「ああ、そっかそっか。見てくれてたんだね。中学生のとき卓球部だったんだ」
そんな風にして僕らは知り合った。
しかもこれまた偶然、何と僕の利用する駅の隣町の駅から乗車しているようで、よく朝出会うようにもなった。
部活は吹奏楽で帰りは遅いらしく、朝の登校時にしか会うチャンスはない。小柄だが元気で朗らか、僕みたいに何の取り柄のない男にも笑顔で話しかけてくれる。そんな彼女に今朝も出会えてルンルンすぎる。
「大学はもう決めてるんですか?」
「三年生だからさすがにね。あとは共通テストの結果しだいで変えると思うけど」
「何学部狙いです?」
「法学部だね」
「法学部!弁護士ですか?」
彼女は体の向きを変えて前のめりになる。
「まあ、そんなとこかな。裁判官とかも気になるけど」
「へぇー、頭いいんですね」
「いやそんなことないよ、弟の方がもっと頭いいし」
「……弟さんいらっしゃるんですか?」
心なしか彼女の声が小さくなった気がした。
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