僕の弟がかっこよすぎて涙腺崩壊する

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 わかってるし、知っている。弟が相見さんに特別な感情を抱いているようには見えなかった。むしろ、告白されたくなくて距離を取っていたんじゃないかな、ということさえ容易に想像できた。でも、それとこれとは別問題だ。弟が相見さんを好きじゃなくても、相見さんは弟のことが好きだったのだから。 「落ち込むなよ。あの人はさ、最初からオレと兄貴が兄弟って知ってたんだ。知ってて兄貴に近づいて、すごい偶然あるんだね、すごいね、運命だね、みたいな感じで兄貴に気をもたせた上にオレのところに来たわけ。兄貴をだしに使ったんだ。だから落ち込むことない。気にする必要もない。ろくな女じゃないよ」  弟はたんたんと述べたが、言葉の端々に怒りが滲み出ていた。 「気にしてない……と言えば嘘になるけど、だからって相見さんのことそんな風に言わないでよ。いい子なんだから、相見さんは。しかも友達のお姉さんなんだろ?そしたら余計に悪く言っちゃダメだ」  弟は何も答えなかった。 「きっとお前が難攻不落って知ってたんだよ。だって今まで告白オーケーしたことなんて一度もないじゃん?だから彼女なりに色々考えたんだと思う。僕もわかるよ。好きだと振られるのが怖い。たぶんダメだろうなと思ってても覚悟がいる。すごい覚悟だったと思うんだ、相見さん」 「そんなもんかね?オレはわかんないけど」 「好きな人ができたらわかるんじゃないかな」  弟はそれ以上何も言わなかった。
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