《振られて良かったぜ》

5/10

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 早速私はエア・トランシーバーを使い、自分の心に話しかけました。 「こちらフレグランス。こちらフレグランス。イブニングペアーどうぞ」  私の名前は()(こう)()()です。つまり、伊香さんが夕梨さんに話しかけているってわけ。 「こちらイブニングペアー。現況を報告せよ。どうぞ」  瞳の中に素敵な男を映したまま、伊香さんが答えます。 「目標を捕捉した。これより攻撃に移る。(くるま)(がかり)の陣で行く。援護を頼む」  こないだ時代劇に出てきた戦法だ。何をするのかはまるで分かんない。 「了解。慎重かつ大胆に攻撃せよ。目標はすでに陥落間近だ。健闘を祈る」  エア・トランシーバーで自分自身と話した後、私は強い気持ちをもってカフェの中へと飛び込んだ。 「突撃ィィッ!!」  幸いなことにドアは開いていた。心の中で前転して銃を構える。目標は接客中だ。近くで見るとマジでイイ男。彼の全身を舐めまわすように眺める。  顔ちっちゃ! 足ながっ! 指ほそっ! 金髪で目が青い。外国人か、ハーフか。うおお、笑顔すげえ! こいつは神か天使か! どえらいモンを見っけちまったなあ、おい!
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加