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記憶
亜夢の母親は、亜夢が6歳の頃に事故で亡くなった。父親は大切な家族を失ったショックなのか。仕事が忙しい。と言って家に滅多に帰ってこなかったそうだ。
亜夢は父親を困らせまい。と悲しむ素振りもせず。母親の代わりに家の家事を1人でやっていた。元々母親の手伝いをしていた彼女。最初はい失敗ばかりで泣いていたようだが、泣いている暇はない。と毎日頑張っていたようだ。
そんな生活を続けていく内に、亜夢の父親が再婚した。再婚した女性には亜夢より3つ下の女の子がいた。
父親はその2人を心の底から愛しているのか、家にあった亜夢が大切にしていた母親との思い出がどんどんとなくなっていき、その代わりに義母、義妹、父親。3人だけの思い出が増えて行った。でも、そこに亜夢は含まれていない。
まるで、亜夢は最初から家族ではなかったかのように…
それでも、彼女は諦めなかった。いつか、愛される日が来ると。信じて…
彼女は中学を卒業後、商業高校に進学し、そして、放課後はバイトに明け暮れた。高校では就職に有利になる資格を多数取得し、バイト代はその試験や資料を買うお金になっていた。
今は昼、事務として働きながら。夜はコンビニでアルバイト。という生活ををしている。本当は大学に行きたかったそうだが、金銭的に厳しい為、就職する事を選んだ。
亜夢は涙を流しながら、俺に聞いた。
「働くことが辛いって訳じゃないけどさ…やっぱり…ね?」
俺は何も答える事が出来ず、その代わりに亜夢の事を抱きしめた。
「なんの為に生まれて来たのかなって…思う自分が嫌になるの」
亜夢は大きな声で泣き喚いた。まるで、小さな子供のように…
「よしよし…」
亜夢は花火大会が終わるまでの間、ずっと泣き続けていた。やがて、泣き疲れたのか。亜夢はスヤスヤと寝息を立て始めた。
俺はそっと、亜夢を抱き上げて、俺のベットの上に寝かせた。
「さてと…」
俺は残っていた生地と具材を使って、1人。たこ焼きを作り始めた。
何度か練習を重ねていく内に、亜夢ほどではないが、上手く焼けるようにはなっていく。何事も練習だな。と思っていると…亜夢が匂いに釣られたのか、ゆっくりと起き上がった。
「腹減ったのか?」
頷く亜夢。それと同時に亜夢の腹の虫が鳴った。亜夢は顔を真っ赤にし、俺も笑いと可愛いと、言うのを我慢するのに精一杯だった。
「食べよっか?」
「うん…」
俺達は残ったたこ焼きを二人で仲良く分け合った。
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