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出会い
大学2年の時だった。梅雨が明け、ジメジメとした暑さが始まった頃。
夜遅くまで課題に追われていた俺は、寝坊をした。その日の1時限目は必修。俺はあと1回の欠席で単位を落とすギリギリの状態。
俺は朝食も食べずに、家を飛び出した。
なんとか、授業には間に合ったものの。慌てて家を飛び出していた為。財布を家に忘れてくる。という大失態。そのせいで昼食にもありつけなかった。
「もう駄目だ…死ぬ」
気分が悪くなった俺は、大学を出て家に帰る途中に倒れてしまった。
「大丈夫ですか!?」
薄れゆく意識の中、俺の耳に届いたのは、どこか優しい声だった。
気が付くと、そこは病院だった。
「熱中症ですね」
どうやら、誰かが救急車を呼んでくれたようだ。意識がなくなる直前に聞いた優しい声の主が呼んでくれたのだろう。お礼を言いたいが、分かっているのは声だけ。
その声の主を俺は探し続けた。2週間程探し続けたが、一向に見つからず。諦めようか。と思った矢先の事だった。
「あ!」
家の近くにあるコンビニで働く。女性店員が俺の顔を見るなり驚いていた。
「あの…あの後お身体大丈夫でしたか?」
その一言で、俺は彼女が救急車を呼んでくれた事を知った。
「君にお礼が言いたかったんだ。よかったら、お茶でもどう?」
まるで、ナンパだった。好意や下心は一切なく、ただお礼がしたいだけ。彼女はその誘いにポカンとした表情になったが、すぐに切り替え。
「分かりました。もうすぐ終わるので、近くの公園で待っていてください」
彼女に言われた通り、近くの公園で彼女のバイトが終わるのを待っていると…
「お待たせしました~」
年季の入ったワンピースを着て現れた彼女の姿を見た時。俺の口から出た言葉は…
「可愛い」
いわゆる、一目ぼれ。という奴だった。
「えっと、ごめんなさい!」
こうして、俺。神崎紘の告白はあっけなくフラれたのだった。
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