兄妹そして姉

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 妹のさくらは幽霊や妖怪が見えるらしい。僕は、自分が見えないことに胸を撫で下ろしている。そんなものは見たくない。 「ねえねえ、お兄ちゃん、そこにいるよ。ほら、そこの電柱のところ。髪の長い女の人。頭から血を流しながら、こっちを恨めしそうに見てる」 「へえー」  いつもこんな感じだ。「ああ」「うん」「へえー」などと適当な返事を返しているので会話にならない。  そして、さくらはいつも黙ってしまう。今日もまた不機嫌そうな顔をしながら僕の後ろをついてくる。  だって、まともに取り合ったら、何センチの傷があるとか、目玉が飛び出してて何センチ垂れているとか詳細に語り出すし、放っておくと話しかけにいくから、これくらいがちょうど良い。  でも、僕にもある種の「それ」は見えるのだ。その種類がどのように分類されるのかはわからない。ただ、僕にも見える「それ」はいる。今まで、一匹? 一人? だったけど。  家に帰って自分の部屋で寝転んで漫画を見ていた。来年は高校受験だというのに勉強する気になれなかった。焦れば焦るほど手がつかない。ふと気配を感じて頭を上げると、入り口にさくらが立っていた。
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