兄妹そして姉

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 ノックくらいしろよ、という気持ちを込めて僕は本から視線を上げ、さくらを睨んだ。さくらは無言のまま、にこりと笑うと、すーっとこちらに向かって近づいてきた。その勢いに思わず仰け反る。 「なんだよ……」 「ちょっと話があるんだけど」 「今、読書中だから後にしてくれないか?」  何か嫌な予感がした。だから、そう言いながら本を持ち上げてみせると、妹はその表紙を見て少しだけひるんだようだった。それでもすぐにこちらをみて声をあげる。 「読書って、漫画じゃない! そんなの読書じゃない! じゃなくて……あのねっ」  そこでいったん言葉を区切ると、さくらは両手を組んでもじもじし始めた。  なんだこの生き物。かわいいじゃないか。僕の妹は天使か何かなんだろうか? いやまあ、さくらが天使じゃないことは知っているけど。いや、断言はできないが、たぶんそうだ。  かわいさという点に関しては異論を唱える余地はない。まあ異論があっても言うつもりはないけれど。かわいいは正義だし。
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