兄妹そして姉

4/12
前へ
/12ページ
次へ
 昔はひどい顔だった。顔は赤っぽくて、皺だらけ。猿みたいで、目だけがぎょろぎょろしていた。それが、僕好みに変化してきた。こんな美少女になるなんて思ってもいなかった。  というわけで僕はさくらのことを目に入れても痛くないほど溺愛していた。でも、最近、彼女のことを疎ましく思うようになってきている。  それはつまり、彼女が妖怪のことばかりを話すようになってきたことだ。それもかなり頻繁に、そして真剣に、熱弁してくるのだ。はっきり言ってうざい。すごく面倒臭い。  さくらは一度大きく息を吸って、吐いた後、 「実は……」と話し始めた。どうせまた例のごとく妖怪の話だろうと思って、はいはい聞きますよーという感じで適当に耳を傾けていると、思いのほか真面目なトーンの声音が聞こえてきた。  あれ? これってもしかして本当に深刻な悩みとかかもしれないぞ? と思った瞬間、 「私、恋をしてるの」という声とともにさくらはぽっと頬を赤く染めた。  僕は自分の顔が引きつるのを感じた。全身の血流が激しくなって身体中の皮膚の下で暴れまわった。目の前がちらちらと明滅した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加