24人が本棚に入れています
本棚に追加
誰であろうと許さないからな!……なんて思ってみたところで、さくらの相手が誰か分からないことには何も出来ない。もし仮に相手の名前を知ったとしてもどうしようもない。だってもう心を奪われているのだから。
「いつからだ? 好きになったのは?」
「一目惚れだったの。1ヶ月前のあの時から」
それは、おそらく1ヶ月前、夏休みが始まる前の時期だと思う。その頃といえばちょうどさくらと二人で肝試しに出かけたり夏祭りに行ったりした時期である。あの時、夏祭りの時、さくらは1時間ぐらいどこかに行っていた。
二人で歩いていた時に、「あっ」という声を残したまま、誰かを追っていった。まさか、あの時か。いや、きっとあの時のやつだ。
「へえ、それで……どんな奴なんだ?……やっぱりイケメンなのか?」
恐る恐る訊ねてみると、さくらは再び恥ずかしそうにもじもじし始めた。その姿を見た途端怒りや憎しみが一瞬にして沸騰した。
「一目惚れって、あの夏祭りの時か?」
さくらは、またも、こくんと首を縦に振った。
こんな顔をさせてしまうくらいだったら、夏祭りなんて行くんじゃなかった。まあ今更後悔しても遅いのだが。
最初のコメントを投稿しよう!