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「それがね……」さくらは上目遣いに僕の顔を窺ってくると、おずおずと口を開いた。僕は固唾を呑んで次の言葉を待つ。
「……すごく頼りがいがあって優しいの……」妹の言葉に、頭の中で『頼りがい』という言葉を思い浮かべていた僕の表情が曇った。
「ひょっとして、そいつも妖怪とか幽霊が見えるやつなのか?」
さくらは異質な存在だ。ふだん、誰とも話ができない。たぶん、僕とくらいしかきちんと話ができないと思う。
「そうなの。だから、フィーリングが合うというか、魂から引かれあったの。お兄ちゃんとは全然違って」
こんなことなら、さくらが「それ」の話をしてきた時に、もっと真摯に対応すべきだった。もっと誠意を見せて好感度を上げておくべきだった。
「それでね、お兄ちゃん。私、この家を出て行こうと思うの」
そいつは確かに頼れるやつかもしれないけど優しくはないだろう。家から連れ出そうなんて、非常識すぎる。
それでも、僕は涙を飲んで見送ることにした。家から出て行くさくらを泣きながら見送った。
「辛かったら帰ってきてもいいからな」
「うん、その時は、お願い。お兄ちゃん」
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