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僕が10歳の頃だった。
その頃の僕はというと、お化けとか妖怪とかが怖い盛りだった。得体の知れない何かというものにすごく怯えていた。
ホラー映画で、得体の知れないものを「それ」と言っていた。ある日、学校から帰ると、10歳の僕の部屋に「それ」はいた。得体の知れない「それ」は怖かった。僕は目の前の「それ」に名前をつけることにした。
名前をつけた後も「それ」は、相変わらず怖かったが、得体の知れないものではなくなり、親近感が湧いてきた。そして本当に親しくなった。
出会った頃が懐かしい。
僕は、さくらと名付けた「それ」を妹という設定にしていた。
僕はさくらと一緒にいた頃を思いだしていた。
さくらの「人間を許さないごっこ」は楽しかった。
あの頃はさくらの話し方は今とはぜんぜん違っていた。きっとおじいちゃん子でおじいちゃんの真似をしてたんだろうなぁ。
「我は許さぬぞ、人の子よ。どうせ、良からぬことを考えているのじゃろう。自然を破壊し、我が物顔で他の生き物の棲家を奪う」
とかなんとか言って、僕の頭に手を当てて、なんかあったかくて愛を感じたな。この子は僕を愛してるって。
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