たかだか二年

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 たかだか二年先に生まれただけじゃない。  姉の洋服はいつも新品だった。  算数セットもピアニカも、新品はあたりまえ。  学年で一斉に購入するものだから、その年によって柄が違ったりする。  私に与えられるのは、いつだって姉のおさがりだ。  他の子のものと比べると、少しだけ古ぼけていて何となく恥ずかしい。  もちろん、そんなの自分だけじゃなかったけど、私にとっては不名誉なことだった。  だから、自分のために初めて新品で購入してもらったランドセルは、子供ながらにじっくり吟味したのを覚えている。 『ピンク色でキラキラしたのがいいの!』  お姉ちゃんと同じ赤いのでいいじゃない、と私を説き伏せようとした両親に断固として首を縦にしなかった。 『これじゃなきゃ、やだ! 絶対、これがいい!!』  しまいには、ピンクの試着ランドセルを背負ったまま床に座って泣き喚き出した私。 『ミクはピンクがいいのよね? だったら、これにしてあげようよ』  私をかばうように親を説得してくれたのは姉だった。  渋々、両親は私が希望したランドセルを購入するため、レジに並ぶ。 『良かったね、ミク』  隣で目を細めて笑った姉には、感謝すべきだったんだろうけど、私はプイッとその顔から目を逸らした。  お父さんもお母さんも、姉の言うことなら聞くんだろうなって、思ってしまったからだ。  二年先に生まれただけで、何でも持っているお姉ちゃんはズルイ。
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