56人が本棚に入れています
本棚に追加
05 ヒットメーカー(1)
ダイチが事務所に入って数日が経った。
プロダクション内では、ヒビキが認めた待望の新人、ということで大いに期待が集まった。
ソラの再来か。
そんな声まで出始め、ちょっとしたお祭りムードが出来上がっていた。
しかし、それに水を差す事が起こり始める。
ダイチの容姿はアイドルとして文句なし。
可愛い系男子路線で進め、少しやんちゃな性格もプラスに作用するだろう。
しかし、歌の方は? と懸念視する声が出始めていた。
ヒビキは、それを知ってか知らずか、毎日のようにボイトレ担当と面談する。
「まだ、何か変化はないか?」
ボイトレ担当は首を振った。
メガネのピントを合わせながら、検査結果のデータを見つめる。
「ヒビキさん、本当にソラ以来の逸材ですか? お世辞にも良い声とは言えないですねぇ……」
「そうか……いいんだ今は。ポテンシャルは間違いなくある。俺が手塩をかけてしっかり伸ばしていく……」
「そうですか……ヒビキさんがそこまでいうのなら。まぁ、気長に成長を待ちましょう」
「そうしてくれると助かる。これに限っては、すぐにとはいかない。時間がかかるものだからな……」
自席に戻ったヒビキは、自分自身に、焦ることはない、と言い聞かせた。
「あのソラだってダイチと同じ様だったじゃないか?」
そう呟き、ヒビキは冷静になった。
「そうだったな……ソラも最初は只の歌が好きな少年だったっけ……」
『ぼ、僕、ソラって言います! よ、よろしくお願いします!』
一瞬、ソラが恥ずかしそうに挨拶する姿が脳裏に浮かぶ。
そして、すぐに首を横にブンブンと振った。
「いや……ダイチは、ソラとは違う……別にソラの代わりってわけじゃねぇんだ……」
ヒビキは、すくっと立ち上がり、ジャケットを羽織った。
「トキオ、俺は外へ出てくるぞ!」
「はい! 了解です、ヒビキさん。ダイチのところっすよね? いってらっしゃい!」
****
「俺だ、ヒビキだ」
「はい、只今開けます」
インターホンにヒビキの顔が映り、ダイチは玄関のロックを解錠した。
ここは事務所にあてがわれたダイチのマンション。
そのマンションにヒビキは訪れた。
「ヒビキさん、お茶飲みますか?……」
「……そんな事より、早速トレーニングだ……」
ヒビキは、台所に立つダイチを後ろからガバッと抱きついた。
驚くダイチをよそに、手を胸元にスッと忍び込ませ、ダイチの乳首をまさぐり始める。
「……はぁ、はぁ……ヒビキさん……や、やめて下さいっ……俺、乳首めちゃくちゃ感じるようになっちゃって……んっ、んんーっ」
ダイチの抵抗むなしく、その言葉はヒビキの唇で塞がれてしまった。
それはいつもの光景だった。
ベッドの上で裸の二人。
ヒビキは手を伸ばし優しくダイチの頬に触れる。
「まだ、緊張しているのか? ダイチ」
「……少し……でも大丈夫です」
「そうか……じゃあ念入りにほぐしてやろう。さぁ、おいで……」
「はい」
ダイチは素直にヒビキの胸の中に入る。
すると、すぐにヒビキの口を使った愛撫が始まる。
唇、耳、首筋。
南下して、肩から脇を通り乳首へ。
ねっとりとしたキス。そして、ぴちゃ、ぴちゃとエッチな音を立てて舌が這っていく。
「あっ……ああん……ヒビキさん……俺、とろけそうです」
緊張していた体がほぐされ、さらにトロトロになるまで溶けていく。
全身が火照り、自然と男のモノを欲して体が開いていく。
ダイチは下腹部に溜まった性欲の塊を持て余し、足をモジモジさせた。
「ふふ、ダイチ、すごく感じているのが分かるよ……ここはもう限界かな?」
ヒビキは逆手でダイチのアナルに指を差し込んだ。
するとダイチは敏感に反応して歓喜の悲鳴をあげる。
「……あーっ! お、お尻の穴……そんな風に指でいじられたら俺……感じすぎておかしくなっちゃう……ううう……感じるっ……気持ちいいっ……気持ちいいよ……」
「そうか、可愛いよ、ダイチ」
「……ヒビキさん……俺、もう我慢出来ないっ……ヒビキさんのチンコ挿れて下さい。俺のケツマンコに……お願いします!」
「もうおねだりか? 男のモノをこんなにすぐに欲しがるとは……どうしようもなくエッチな男になったな、ダイチ」
「そ、そんな言い方って……だって、俺……」
「ん? 違うのか」
ヒビキは、意地悪そうな顔で指の出し入れを早くする。
「くううっ、やばいっ……ひ、ヒビキさん! 俺、ヒビキさんが言う通り、どうしようもなくエッチな男です……だから、早く、早く……」
ダイチは、M字開脚で腰を浮かし、ヒクヒクするアナルをヒビキに向けた。
「ふっ、しょうがない男だ。挿れてやるか……」
「……やった! ヒビキさんの勃起チンコきたっ……うっ……入ってくるっ……ケツマンコの奥までくるっ……うっ、かはっ……いいっ!……いいっ!」
ダイチは、ふと、姿見の鏡に、男に襲われてよがる男の姿が映った。
あんなに嫌だったのに……俺、こんなになっちゃった……。
確かに、初めてのセックストレーニングの時は違っていた。
ダイチは、開口一番ヒビキに言った。
「ヒビキさん、俺、あんたとしてもイク気ないんで」
当初ダイチはそんな風に突っぱねていた。
しかし、ヒビキの愛撫は多彩で甘美。
長く細い指が体中を触手のように這い回り、耳たぶは涎まみれで甘噛みされ、乳首はピンっと勃起するまで吸われ続けた。
今まで味わった事のないその快感は、ダイチの体をいやらしい体へと変貌させた。
自然と腰をくねらせ、喘ぎ声を上げ悦楽によがる。そして、男の肉棒を求めて下腹部を熱くする体。
「……俺は違う! 違うんだ!……どうして俺はこんな体になってしまったんだ」
混乱するダイチにヒビキは言った。
「ダイチ、お前はもともとそういう男だ」
「何を! 俺がビッチだとでも言うのかよ!」
「ふふ、勘違いするな。それは、スターになる為に必要な資質というものだ」
「スターだと!?」
ヒビキの説明は、性感帯を広く開発しその感度を高めていくことで、歌の表現力を豊かにし人を惹きつける歌声を作り出す、というものだった。
「……それがセックストレーニングってことなのか?」
ヒビキはうなづいた。
「だから、お前はどんどん感じる体になればいい。遠慮なく男を求め男で達しろ。それこそがお前の目指すところなのだから。数をこなせば自分でも成長を実感する事が出来るだろう」
「……成長?」
ダイチはふと気がついた事があった。
ヒビキにイカされる時に一瞬頭によぎるイメージ。
どこか大きい舞台。
そこで、誰かが、大観衆を前に気持ちよく曲を演奏している。
そんなイメージ。
それが何なのかよく分からないのだが、回数を重ねる度に鮮明になって行く。
それをヒビキに問いかけた。
「……やはりお前は、セックスシンフォニックの影響を受けやすいようだな……俺の目に狂いは無かった」
「セックスシンフォニック?」
「ふふふ、俺の音楽に対するイメージだ。気にするな」
それ以上、ヒビキは何も言わなかった。
ダイチの中で、セックストレーニングによって、本当に何か得ることができるのかもしれない、という腹に落ちるものがあった。
それからというもの、ダイチはヒビキの調教を素直に受け入れるようになったのだ。
「いいっ、いいっ……奥まで来てるっ……ヒビキさん、もっと、もっと!」
ヒビキの肉棒がアナルを出入りする度に、込み上げる快感。
力が抜け、顎が上がり、自然と漏れ出る喘ぎ声。
耳には、低い声で囁かれる甘くてゾクゾクする言葉。
頭の中が空っぽになり、ただペニスの事しか考えられない。
「俺、いっちゃう、いっちゃう……あーっ!!」
ダイチは、絶頂の断末魔と共に快楽の沼底へと沈んで行った。
****
ヒビキは、ジャケットの袖に腕を通した。
「じゃあ、俺は社に戻る。明日は朝からスタジオでレッスンだ。いいな……」
「……はい、ヒビキさん」
ダイチは、一人になるとやるせない気持ちになった。
男に犯される事にすっかり慣れた自分。
何の躊躇もなく、アナルを差し出す。
ちょっと前迄は、こんな事になろうとは少しも思わなかった。
ふとカイトに貰ったギターを見つめる。
じわっと溢れる涙が目を覆う。
「カイト、俺、このままだと、お前とのセックス忘れちゃうよ……」
ギターに縋り付く。
「でも、お前がいけない! お前が俺を捨てたから……だからいいんだ! これで! うっ、ううう」
ダイチは、カイトの事を想い、いつまでも啜り泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!