03 愛し合う男達(3)

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03 愛し合う男達(3)

ダイチのバイト先のバーガーショップ。 そこに、ヒビキの姿があった。 サングラスを取り、ダイチの姿を注視する。 「いらっしゃいませ、ご注文をお伺い致します」 「なぁ、お前。メジャーデビューに興味ないか?」 「な、何だよ、あんた……突然」 「こういう者だ」 ヒビキは、スッと名刺を出す。 ダイチは、不審そうな目でヒビキの顔を確かめ、名刺を受け取った。 「……アイドルプロダクション。音楽関係者?」 ヒビキは真っ直ぐダイチを見つめる。 「この間の野外ライブ、見させてもらったよ。中々いいライブだった」 「それは……ありがとうございます」 「是非、ウチに来てもらいたい。俺が直々にプロデュースする」 「そんな事、突然言われても……」 「考えておいてくれ……詳しく聞きたくなったらそこに連絡先がある……じゃあ」 ヒビキはそのまま立ち去って行った。 ダイチは、名刺をもう一度確かめると、ズボンのポケットに突っ込んだ。 **** 「お疲れ様です!」 バイトの時間が終わり、ダイチは店を飛び出した。 駅に向いながら独り言を呟く。 「おいおい、マジかよ! メジャーデビューって……ついに俺達にもチャンス到来か!!」 「まずは、カイトに連絡っと……いや待てよ。こんな出来すぎた話ってあるか?」 「良く考えてみると、聞き違いだったかも知れん。よし! もう一度、詳しく聞いてみるか!」 駅前に着くと、ベンチに座りスマホを取り出した。 ヒビキはすぐに通話に出た。 「なぁ、ちょっとだけ話を聞きたい」 「何だ?」 「メジャーデビューって本当か?」 「ああ、お前ならメジャーデビューも夢じゃない」 「そ、そうか……よし!……ん……あれ? 今、あんた、お前ならって言ったか?」 「ああ……そう言った」 「お前達の間違いだろ? 俺達は二人のチームだぜ」 「お前、で合ってる。ダイチ、お前一人だけだ」 「はぁ? 何言ってる。冗談だろ」 「冗談に聞こえたか?」 「ふっ、なら興味ねぇよ。手間を取らせた。失礼する」 「そうか……まぁいい。気が変わったらいつでも連絡して来い」 通話を閉じたスマホを眺める。 そして呟いた。 「なんだ……俺達の音楽がちっともわかっちゃいねぇ。俺とカイトで一つの音楽だっつうの。そんな事もわかんねぇ奴の所に行けっかよ! アホくさ」 「さぁて……久しぶりの練習、楽しみだぜ! カイトの顔、早く見てぇぜ……ふふふ」 ダイチの頭の中は、既にスカウトの話は何処かへ行き、カイトの事で一杯になっていた。 **** とあるスタジオに着いた。 そこはカイトのバイト先で、学生の頃から働くカイトは今や最古参。 気のいい店長で、レコーディング機材のレンタルや空き部屋の使用許可など色々と便宜をしてもらっている。 ダイチは、掃除中のカイトの背中に声をかけた。 「来たぜ。カイト」 「おお、今終わる……今日予約入ってない部屋をずっと使っていいってさ」 「マジか、一日中練習出来るな」 「ああ」 ダイチは、カウンターに立つ店長に軽くお辞儀をした。 次のライブに向けての練習をスタートさせていた。 ダイチは、汗だくになりながら熱唱し、丸椅子に腰掛けた。 「はぁ、はぁ……今のどうだった?」 「いいんじゃないか? ちょっと休憩しよう」 「ああ……」 休憩中は、先日のロックフェスの話題で持ちきり。 会場の冷め止まぬボルテージが今でも二人の胸に刻み込まれている。 少し思い出しただけで気持ちが昂ってくるのだ。 興奮しながら話すうちに、衣装の話になった。 ダイチは、自分の服装を見せながら話す。 「……で、今日の服装はちょっと意識してみた。どうだ?」 「へぇ、雰囲気出るな」 「だろ?」 黒のレザーを基調としたハードロックスタイル。 派手なTシャツに、ドクロのアクセサリー。 往年の定番スタイルなのだが、最近では一周回って有り。って事になっている。 「ところで、ダイチ。お前のその革パンさ、ぴちぴち過ぎないか? 動きづらそうだ」 「ん? そうか?」 「ちょっと、ケツ、さわらせてみろ」 「……少しだけなら、いいぜ。ほら」 ダイチは、プリっとしたお尻をカイトに向けた。 カイトの手が触れる。 「すげぇ、すべすべしてる。思ったより柔らかい素材なんだな」 「だろ? ライブの時はさ、動き易くないと……って、お前! いつまでケツを触っているんだよ!」 「いやー、ダイチの尻って、小尻で引き締まってるくせに柔らかくて触り心地いいっていうか……」 「……お、おい、もういいだろ?……あっ、もう! 触り方がエロいって!」 カイトの手は、欲望のままに徘徊を始める。 お尻の膨らみを撫で回し、それに飽きると腿の付け根に手を突っ込んで強引に股を開かせ、尻の割れ目、特にアナル周辺を入念に擦り始める。 「ば、バカ! ふざけるな……やめろ!」 「……うわっ……後ろから股を覗くと勃起チンポの形がクッキリと浮き上がってる……金玉の膨らみとかエッロ!」 「うっ、くそ、くそっ……」 さらにエスカレートする。 手を一気に腰から革パンの中へと滑り込ませた。 「……はぁ、はぁ……だから、なんで手を突っ込んでくるんだよ……直に触っていいなんて言ってねぇ……おい、革パン脱がすな……って、パンツまで……やめろ……」 「ケチケチすんなって……減るもんじゃねぇだろ?」 「あっ……てめぇ、今度は何してんだよ……ゆ、指入れてくんな……あっ、ううっ……こんなところ誰かに見られたらどうすんだよ」 「へへへ……誰も入ってくるかよ……心配するなって」 カイトの指は、アナルの中をぐりぐりとねじ込み入っていく。 そして、目的の場所、前立腺のコリコリしている部分に触れる。 「……うっ……ううっ……やべぇ……そこは……」 ダイチは、弓なりに背中を反らせ、体をブルブルっと小刻み震わせた。 カイトの指先は止まらない。 「カイト、やめろよ! 俺は本気で言ってんだ!……それ以上やったら、いっちまう……いくって、だから、マジで……やめ……うっうううっ」 「……ははは、流石に指だけでイクなんてあるかよ……えっ?」 「いくっ……うっ……」 「ダイチ……嘘だろ? お前、まさか指だけでいったのか?」 カイトは何故か申し訳なく思い、すぐに手を引っ込めた。 ダイチは、はぁ、はぁ、と肩で息をしていたが、涙目になってカイトを睨む。 「ふざけんな! カイト……だから言っただろ? いっちまうって! バカやろう!」 「ご、ごめん。まさか、本当にいくとは……でも」 「でも? 何だよ!」 「……ダイチの今の顔。可愛いな……」 「な! ふざけるな! こっちは恥ずくて、顔から火が出そうなんだ! ……はぁ、熱い……ちょっと表へ出て火照りを冷やしてくる……」 「待てよ、ダイチ……」 「何だよ!」 「俺がその火照りをとってやっから……」 「……カイト」 カイトは、強引にダイチを引き寄せて口づけをした。 そこからは、いつものコース。 後背位で襲い掛かるカイトは、ダイチの恥じらいに欲情したイキリ勃ったペニスをガンガンにダイチの中へと押し込む。 そして、そんなカイトの突き上げを必死に耐えながら、ダイチは肛門をギュッと引き締めて、カイトのものをこれでもかと絞め付ける。 無我夢中で男同士の快楽を追い求める二人。 そして、絶頂が迫る。 カイトは、高速ピストンで最後の捲りにかかった。 「……ダイチ、ダイチ、俺のダイチ。こうしてやる、こうしてやる! オラオラ!」 「馬鹿カイト、激しすぎだって……うっ、うううっ……かはっ……いきそう……」 「やばっ、こっちも出るっ……」 「中に出せよ……カイトのミルク沢山……うっイクっ」 「あーっ!」 二人は丸椅子を抱き抱えるように倒れた。 部屋を出て自販機横のベンチに座った。 飲み物を片手にため息をつく。 「……ふうっ。またやっちまったな……ダイチ」 「ああ、やっちまった……相変わらずだな、俺たち」 「ああ、相変わらずだ。何か、その辺にいるバカップルと同じじゃねぇ?」 「まさにバカップルだな……俺とカイトは」 「はぁ……」 二人は再び深いため息をついた。 「なぁ、ダイチ。俺達さ、少し自重しないか?」 「賛成だ。ちょっとイチャつき過ぎだ。もう学生じゃないんだ。我慢を覚えなきゃな」 沈黙。 壁掛け時計のカチカチ音だけが静かに響く。 カイトは切り出した。 「じゃあさ、ダイチ。そう言う事だからさ、明日から我慢ってことで……最後にもう一発な」 「……ああ、そうだな。俺もそう思ってた」 顔を合わせた二人。 そして一気に吹き出した。 「ぷっ、あははははは!」 「ぶははは!」 **** 夕暮れ時。 スタジオ前に架かる橋を渡り、二人は帰路へ着く。 一番星が輝き始める。 「今日は頑張ったな、俺達」 「ああ、結構頑張った。少しはフェスのメインステージに近づいたかな?」 「そうだな……一歩、一歩。まずはメジャーデビューを目指して、だな」 「メジャーデビュー? ああ、そういえば、すっかり忘れていたんが、今日バイトでさ……」 ダイチは、スカウトの話をかいつまんで話した。 「全く、そいつ、ちっとも分かってなくてさ! 曲がいいのは二人の力だっつうの。あははは」 笑い飛ばすダイチ。 カイトは、そんなダイチに真剣な目を向ける。 「なぁ、ダイチ。その話、受けろよ」 「えっ!? 何を言ってるんだ? 俺一人って言ってんだぞ?」 「ああ、分かってる」 「冗談はよせよ!」 ダイチは、怒った口調でそういうと、すぐに顔を背けた。 カイトは、幾度となく言ってきたセリフを繰り返す。 「ダイチ、お前はこんな所でくすぶってる奴じゃない。もっともっと売れていいはずだ……今の俺じゃお前をそこまで連れて行ってやれねぇんだ……」 沈黙。 それを破ったのは、怒りに我を忘れたダイチだった。 「カイト! お前は、どういうつもりだ? あん? 俺を他の奴に差し出すっていうのか? 俺を捨てるのか?」 「……ば、バカ。違うって……今の俺じゃな……」 「んな事を聞いてるんじゃねぇよ! お前は、俺を手離して寂しくないのかって聞いてる。いやまてよ……まさかお前、俺を嫌いになったわけじゃねぇよな?」 「だから、今は好きとか嫌いの話をしているんじゃなくてな……」 「俺は、好きとか、嫌いとかの話をしてるんだ!」 「……とにかく、落ち着けって! ダイチ!」 「落ち着いてなんか、いられるかよ! ああ、分かったよ! 俺は、そこに行けばいいんだろ! 行ってやるよ! お前の気持ちはよーくわかった……はぁ、はぁ、じゃあな! カイト!」 「……ちょっと、待てって……」 「ふん! 俺はもう行く! さよなら!」 ダイチは、自分のギターを担いで歩きだす。 カイトは、大声でダイチに向かって叫んだ。 「ダイチ! 俺も頑張って成長して見せる! きっと、迎えにいくから先に行っててくれ!」 ダイチは、振り返らずに小声で呟いた。 「……何で追いかけて来てくれないんだよ……カイト。お前は俺と離れていても寂しくないのか? 俺は寂しくて仕方ないってのによ……結局、お前は俺を捨てたんだ……うっううう」 ダイチは、涙を悟られぬよう、逃げるように立ち去った。
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