美しきこと醜きこと

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美しきこと醜きこと

 とある山に蝶の姉妹が暮らしていた。 幼虫の頃こそ二匹の容姿にさほど違いはなかったが、成長して羽を持つ成虫になってからはその容姿の差が同じ姉妹でありながらなぜか如実に顕れたのである。 「あらごきげんよう、私のかわいい妹さん」 「お早うございます、お姉さま。今日もお美しいことで」 「あらまあ、ありがとう。でも毎日毎日『美しい』とか『綺麗』とか言われ続けるのも、それはそれで少々飽き飽きするというのがわたくしの正直なところですわ。それが美しきものの定めでありますなら致し方のないことでございますけれど」 「お姉さま、それは醜い私にとってとても贅沢なお悩みに聞こえますわ。 わたくしのようなものはお姉さまのただの引き立て役。それが醜きものの定めでありますなら致し方のないことでございます」 この蝶の姉妹はそういう間柄であった。
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