美しきものとして

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美しきものとして

 姉の蝶は美しかった。 どの山でも林でも森でもその虹色に輝く姿にありとあらゆる生き物がその美しさに嘆息した。 それはもし人間にたとえるなら、女として本望であったろう。 だがこの山で愛でられば、次はあの隣の山でも、そうしたらば次はまた向こうの山でも川でも、たとえ沼地であっても己の美しさを誇示したい。 姉の蝶は自らの美しさを知っていたので満足することはなかったのである。 
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