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 しん、となった店内にジャズの音色が響く。ボンというベースの音をきっかけに、また店員が口を開いた。 「お母様は、あなたの中にお父様を見ているのです。何気ない仕草や、癖。それに、立ち姿。あなた自身、自分の中にお父様を見ることがあるのでは無いですか?」 「……確かに、時々思います。寝起きで鏡を見た時とか、親父に似てるなって」 「あなたが生きている限り、お父様はいなくならないのです。お母様は何度でもお父様に会える」 「なるほど。そういう意味ですか」 「この先、あなたの子供が生まれたら、その中に今度はあなたがお父様を見るかもしれません。だから、しばしの別れだと思います。もちろん、大切な人の死は寂しくて悲しいことですが」 「しばしの別れ……」  店員の言葉を噛み締めるように呟いて、グラスに入った液体を一気に飲み干した。 「ありがとうございます。なんか気持ちが楽になりました。俺、今度しっかり墓参りに行って親父にたくさん話をしようと思います」 「それは良いですね。きっとお父様も喜ばれるかと」 「じゃあ、俺、そろそろ帰ります。会計をお願いします」  まるでそうなることがわかっていたかのように、店員は会計札を素早く差し出した。
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