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「隣、お邪魔します」
「!……どうぞ」
まさか声をかけられるとは思わなかった。そんなこと気にするようなタイプに見えなかったからだ。せっかく静かに飲んでいたのに、興が削がれたと思っていたほどだ。
驚く私の目をどこか落ち着かない様子で見つめ返しながら、若者がニコリと笑った。
「こんなお洒落なバー、慣れてなくって。うるさくてすみません」
「い、いえ。お気になさらず」
世の中まだまだ捨てたもんじゃないのかもしれない。見た目も行動も私とは違うが、彼らも同じ人間なのだ。自分が若かった頃とあまりにも文明が違いすぎて、時々忘れてしまう。普段は宇宙人か何かのように思っている。
「えっと……、何を頼もうかな。ビールありますか?」
「はい。いくつかご用意がございます」
「じゃあ、ビールで飲みやすいやつをひとつ」
「かしこまりました」
カウンターから伸びているサーバーから、黄金色の液体が注がれる。丁寧に泡を切って、若者の前に差し出された。
霜が降りるほど冷やされたグラスをこれまた美味そうに傾ける若者に、私は好感を覚えた。
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