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 ロンググラスを手に取って、一口含む。  驚いた。  見た目はジュースのようだが、バーボンとグレナデンの甘味をライムがキリッと締め上げている。強い酸味のある風味は完全に大人の飲み物だ。  カクテルなんて物は、全て甘い物だと勝手に思い込んでいた。 「……美味い」 「ありがとうございます」  店員は満足そうに微笑んだ後、カウンター内を移動する。 「もう一つは、ジプシーをご用意しました」 「へぇ!初めて飲みます。綺麗なカクテルですね」 「ベネディクティンというハーブリキュールを使用しています。ベースはウォッカです」  淡い金色をした液体をしばらく眺めたあと、若者が小さく口をつける。 「わぁ、意外と強いですね!甘いけれど、独特な味がする……」 「ベネディクティンは、もともとヨーロッパの教会で代々造られていた秘蔵酒なのだそうです。ふんだんに薬草を漬け込むので、風味に癖があると感じる方もいるかもしれません」  へぇ、と言いながら、若者はもう一度グラスを口につけた。さっきよりも大きく液体が無くなっていく。 「ちなみに、ジプシーのカクテル言葉はしばしの別れ、です」 「えっ」  驚いた顔で若者が店員を見つめる。 「失礼いたしました。少し会話が耳に入ったもので」 「あぁ……。いえ、全然良いんです」 「人間が誰しも迎える死と言うものは、本当に永遠の別れなのでしょうか」  若者の前にチェイサーの水を置きながら、店員が語りかけている。
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