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「それはどういう意味なんだい」
思わず店員に声をかけてしまった。そうしたくなる語り口調だった。
「私は死が永遠の別れだとは思っていないのです。死が二人を分かつまで。結婚式でよく耳にする言葉ですが、死しても尚、共に過ごし愛し合っている人もいるのですよ」
まるで見た事があるかのように店員は言う。なんとも酔興な店員だ。負けじと切り返す。
「ほぅ。それは是非、お会いしてみたいね」
「会えますよ。ほら、そこに」
誰もいないはずのテーブル席を、店員がスッと指で示す。驚いて振り向いた私に向かって、冗談です、と店員がクスリと微笑んだ。
「なんだ。趣味が悪いな」
「申し訳ありません。ほんの少し、ふざけすぎました。でも、死が永遠の別れだとは思っていないことは本当です」
「じゃあ、なんなんですか。死んだ人間にまた会えるとでも言うんですか」
小さな苛立ちを語気に乗せて、若者が店員へぶつけた。
「えぇ。そう思います。きっと、あなたのお母様は亡くなったお父様に何度も会っているはずです」
「また冗談ですか?それなら……」
「冗談ではありません」
うんざりした様子で若者が会話を切り上げようとするのを、店員が静かに止めた。
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