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11魔女の系譜
二人の再会から遡ること数日前。
子どもの頃から追い求めた謎の答えを得るため、ダイはついに王国の離宮のさらにその奥深く、聖地であり禁足地とすら呼ばれている場所にたどり着いた。
古の昔、『昏き穴』という忌み地より這い出る魔物を、近衛騎士団の前身となった魔道騎士団の初代団長にして、『赤毛の魔導士』と言われる人物が先頭に立って打ち滅ぼし、その地を封じた。
その後も国が危機に瀕する際には必ず『赤毛の魔導士』が長い年月歴史の表舞台に現れ続け、そのためその呼称を残して代替わりしていくものだと思われていた。しかし実は不老の魔力を持つ同一人物だったのではないかという伝承もある。
というのも何百年も続くこの国の歴史の中で、王族の血脈に連なる人物の内に真っ赤な髪を持ち、その時代時代の王族やその血脈に連なる者たちの手助けをして導くものが必ず現れているからだ。
ある時はその妻や母となり、子孫を産み育て直接見守ってきたとすらも伝わる。
何日も離宮で待たされ、ようやく目の前に現れたその人は、表向きは『現王の姪』と言われている人物だった。ダイは近衛騎士団にいた時のツテを使いまくって、ようやく今回の王都行きの目的であった彼女と直接会うことを許された。
大きな窓から降り注ぐ、傾いてきた太陽の日差しに耀く雛罌粟の花に似た赤毛を腰まで豊かに垂らし、若い麦の穂に似た色の瞳も輝く。一見穏やかな笑みを浮かべている赤い唇は婀娜っぽい雰囲気すら漂わせていた。
その瞳を見た時、ダイは直感的にその人が愛しいあの人の血族であると感じることができた。
「ふうん。ここまで辿り着けたとあっては、お前を無下にはできないようだね?」
それなりに段差のある離れた位置にいるが、左右の鼓膜に直接囁かれているように女の声が流れる。何か不思議な魔法でも使っているのかもしれないが、その原理はよくわからない。
値踏みされるような目つきで睥睨され、空気を実際に濃い魔力の霧のようなものが満ちる。息苦しさを感じながらもダイは敢えて部下に指示する時のようにはっきりとよく通る大声で応えた。
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