火花の散る向こうで

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 気が付くと、線香花火が一つ消えていた。  兄は、未だに悠々と火花を散らす自分の花火を自慢げに僕に見せつける。 「今年は、俺の勝ちだな」  そう言った兄と、その火花の向こうに浮かぶ笑顔。  僕はこの光景を、この一瞬を、一生忘れないだろうと思った。  兄の笑顔は、これまでやってきたこの勝負で勝ったどのときよりも、嬉しそうだった。 「じゃあ、決まりだな。この兄ちゃんのために、かっこいい曲を作れ。これがお願いだ」  やっぱりだ。  僕は、微笑みに綻んだ口元でうつむいた。  やっぱり僕は、どうしてもこの兄には敵わない。
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