火花の散る向こうで

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「お前さ、将来何になるの?」  移り変わる花火の色を見つめながら、兄がそう言った。 「急になんで?」  そう返した僕に、いいじゃんせっかくだし、と兄は言う。僕にはそのせっかくの意味するところが全然分からなかった。 「この際だから、夢の話とかしとこうぜ。聞きたかったんだよ。もうそんな話しなくなったし」  そう言いながら、兄は新しい花火に火をつけた。先ほどとは違う、青色の火花が闇に灯る。 「来月には、もう俺たち別々なんだからさ」  兄の持つ青い花火の光を見つめながら、僕はその言葉を聞いていた。その通りだった。花火の音が、少しずつ遠のいていくような感覚がした。  両親の結婚生活がうまくいかずに、僕たちはそれぞれ父か母かを選ぶことを強いられて、お互いに別々の親を選んだのだ。  いつかはこうなるだろうと大方の予想はしていたけれど、それでも実際に起こると、これはなかなかに寂しいことだった。 「兄ちゃんは、やっぱり父さんのほうがいいの?」  橙に光る自分の花火を見ながら、そう言った。ずっと訊きたかったことだった。 「おう。父さんのことは尊敬してるし、本気でプロ目指すんなら離れられねえよ。母さんとお前と離れるのも、それは嫌だったけどな」  あ、ちなみに俺の夢はプロボクサーだから、という兄に僕は、知ってるよ、と返す。 「お前こそ、急に海外に行くわけだろ。それはいいのか?」  揺れる閃光をぼんやりと視界にとらえながら、僕はその問いに対しての答えを探していた。  音楽関連でアメリカの方に縁のある母からは、兼ねてから移住の話があった。本当にあなたが音楽を極めたいなら、いい先生がいるから、ということだった。
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