火花の散る向こうで

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「これが、本当に最後だな」  そう言った兄の語気は、どこか名残惜しそうでもあった。  住宅のなかにあるこの寂れた公園で、僕たちが昔のように遊具の周りを走り回ったり、今のように花火をしたりするのも、もうこれで最後なのか。  兄が小学校を卒業してからやらなくなったこの遊びは、数年の月日が経った今でも、昨日のことのように思い出せる気がした。  初めは両親が側についてやっていたが、二年や三年も経つと、二人だけで好きにできるようになった。  当時は小学生だったからお互いにこの遊びが好きだったのかと考えていたけど、やっぱりいつまで経っても花火は好きなんだなと思った。  色鮮やかな光と火花の弾ける音、水につけたときのじゅうという音や、夏を感じる煙の匂い。  花火大会などで打ち上げられる大きな花火ももちろんいいが、ささやかにできる手持ち花火も、また違った雰囲気でこの時間を濃密なものにしてくれる。 「最後の三本勝負で一対一とか、なかなか熱い展開だな」  そう言って、兄は火元のろうそくに消えた火をつけ直した。 「花火だけにね」  僕がそう返すと兄は、お、と声をあげる。 「調子いいな。座布団持ってきてやろうか」  僕たちはまた同じようにしゃがんで、お互いの線香花火を火元に近づけた。
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