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少年野球の練習で疲れ果てた体が、置物のようにベッドに沈む。
窓から入る仄かに湿った夏の夕風が、生ぬるくて心地悪い。
今日もダメだった。
今日も怒られた。
今日も失敗した。
僕が僕でなければ、きっと、毎日はもっと楽しく、上手くいくのに。
僕が僕でなく、兄さんだったなら。
そうしたら、きっと。
『なんだ、寝てるのか。』
重い瞼を持ち上げると、横たわる視界を2本の足が横断していた。よく日に焼けた、青いハーフパンツの両足。
ゆっくりと目だけ動かして体を辿ると、
『起きてるじゃん。』
左の八重歯を覗かせ、右頬にえくぼを作って笑う、兄の顔があった。
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