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苦笑いして頭をひと振りすると、不吉な影を振り払うように雨の中を駆けた。
一向に止む気配のない雨に、庇のあるシャッターのおりた店を見つけて駆け込んだ。
「なんだよ。晴れているくせに」
手のひらで濡れた腕や首をぬぐった。
「あの時も」
あの時? あの時って、どの時だ?
「天気雨……狐の嫁入り」
自分の唇唇をついて出た言葉に、首を傾げた。
なぜそんなことを知っているのだろう。
こどもの頃、誰かから聞いたのか。
ぱたぽた激しくあたりを叩いていた音は次第に小さくなり、消えたと思ったら雨も止んだ。
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