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なるほど狐の嫁入りか。たしかに化かされた気分だ。
濡れた髪を指で剥きながら、照りつける太陽の下へと足を踏み出した。
乾いた土が雨を吸いこんで吐き出す、むわっとした匂いが鼻につく。
その匂いを吸い込んだとたん、くらりと眩暈がした。
濡れた髪。土に汚れた運動靴。
どくん。
自分の心臓が大きく速く打ち始めるのを感じた。
「ねえ、傘があるよ」
傘?
瞼の奥にひっくりかえった傘の骨組みが見えた気がした。
壊れたビニール傘。
思い出した。
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