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海老原くん。
そういえばこんな日だった。あの時も天気雨だった。
「あそこに傘がある」
「やめようよ」
「使えるかもしれない」
切れ切れだった記憶が繋がっていく。
薄暗い橋の下。息をひそめるように二人で潜りこんだ。湿った埃の匂い。濡れた髪。
海老原君は同じクラスだったが、あまり親しくはなかった。だから今まで思い出すこともなかった。
ぺたりとした黒い髪の海老原くんが言う。
「違うよ。思い出したくなかったからだよ」
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