恐い雨が降る

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 階段をおりると思ったより橋は大きく、僕達をすっぽり包み込み雨から守ってくれた。  橋の下に階段があることも知らなかったし、川へ降りようと思ったこともなかったから、ちょっとした冒険みたいでわくわくした。  ところどころ干上がって雑草が茂っている川は、大きな水溜りのようにしか見えなかった。  あたりにはゴミが散らばっていて薄暗く、澱んだ水の匂いがした。 「河童とか、いたりして」 「こんな汚いところに住まないよ」  雨から逃れた僕達はほっとして軽口をたたいた。  今まで喋ってこともなかったくせに、一緒に走ってかくれんぼのように橋の下に並んでしゃがんでいると妙にはしゃいだ気持ちになって、ずいぶん親しかったような口をきいていた。
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