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ジャスミンの家に引っ越してから間も無く、小さな工場で契約社員として働く事になった。
工場といっても精密機器や食品を扱うような清潔な工場ではなくて、いかにも昔風な、色々な機械や乗り物の部品を造っている汚い町工場だ。
工場の屋根から突き出る煙突からはモクモクと灰色の煙が立ち上り、工場の中はそこら中が汚い機械油にまみれ、空気は澱んで息苦しい。着ているものも、自分自身も、出勤してしまえばたちまち油臭くなってしまう。
大した空調もなく、この夏はすごく暑かった。何もしなくても汗が垂れてくるくらいで、あんなに汗をかいたのは初めてかもしれない。
よくみんなあの環境で働いている。
働いている人は大体がおじさんの機械工か、お爺さんの機械工か、ベテランのパート主婦で、私みたいな年齢の女の子は1人もいない。
だから私が面接に行った時、少し基本給を高くするから、是非とも正社員として末長く働いてほしい、と言われた。
だけど、心がボロボロになっていた私にそのつもりはなく、しばらくは準社員で働かせてほしいと言った。
「パート勤務と迷っているくらいなんです。」
と言うと、では準社員で、と言う事になり、それでも月給を1万円も上乗せしてくれた。
自分は使い物にならないダメ人間だと思いかけてた私に取って、すごく有難い話。
私の仕事内容は、機械工でも、パートのおばちゃんたちのような製品の検品でもなく、簡単な伝票整理や電話応対。機械の稼働率のチェックなんかもする。
正直、大学まで出た子がするような仕事じゃない。
だけどみんなすごく親切にしてくれて、前の職場よりもすごくハッピー。
その分お給料は随分と減ったけど、今の私にお金はそんなに必要ない。
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