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働き始めて一週間ほどすると、休憩時間にパートの三谷さんに声をかけられた。
「琥珀ちゃん、第二工場にはもう行ってみた?琥珀ちゃんよりも少し若い男の子が働いているのよ。」
私は心底驚いた。一週間も経つのに、自分と同じくらいの子がいるとは全然気が付かなかったから。
「いいえ。でも、丁度今日から第二工場の機械の稼働率も入力する事になっているので、探してみます。」
「すごく変わった子よ。はいコレ。うちの娘が、これ好きなのよ。」
三谷さんの隣に座っている女性がビスケットの包み紙を渡してくれながら言う。
彼女は確か、横峯さん。
「変わってるんですか?じゃあ、私と一緒だ。」
ちょっと卑屈っぽく言った私を見てから、2人は顔を見合わせて笑った。
「たとえ琥珀ちゃんが変わってたとしても。」
「高田君と同じって事にはならないだろうね。」
息ぴったりな感じで2人は会話を続ける。
「見た目は可愛いんだけどねー。」
と会話を続ける2人を眺めながら私はビスケットの包みを剥いて
「頂きます。」
と口に入れる。
「はいどうぞ。」
と横峯さんは律儀に返事をしてくれる。
ビスケットは、少しパサパサで牛乳が欲しくなる優しい甘さだった。
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