1人が本棚に入れています
本棚に追加
可愛い顔。と三谷さんは言ったけど、そんなもんじゃない。すごく整った、綺麗な顔だ。何ならテレビに出れそうなくらい。
何でこんなところで働いてるの?
と言葉が出そうになった時、後ろから工場長が現れた。
「お、高田、初対面かな?前に言った琥珀ちゃんだ。お前の方が少し先輩だからな。色々教えてあげてくれよな。」
工場長は、いかにも優しく高田君に声をかけた。
その後に私が見かけた高田君は、びっくりするほど暗い表情になっていて
「はい。」
と言った声も、機械音にかき消されてしまいそうに小さいものだった。
どうしても気になった私は、こっそりパートの三谷さんのところに行くと
「三谷さん、高田君チェックしてきました。」
と子分のように報告した。
「変な子だったでしょ?」
と返ってきたので
「変ていうか、工場長にパワハラでもされてるんですか?」
と聞いてしまった。
三谷さんは少し笑って
「いいえ。むしろ工場長は気を遣って優しいくらいよ。なんだかここに入社してきた時から暗いのよね。何か訳ありな子なのかしら。お昼休憩も、みんなとずれてとってるのよ。」
と言った。
訳あり。
何となく納得できた。
でも、あんなに綺麗で爽やかな笑顔ができるのに、どうしてそうなちゃったのかしら。と私は何だかモヤモヤを一つ抱え込んだような気持ちだった。
聞けば高田君は私の3つ年下で、私の弟と同じ歳だという。
最初のコメントを投稿しよう!