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秋が始まりかけている日曜日の夕方、私は部屋で音楽をかけながら足のマッサージをしている。普段立ち仕事をしているので、脚がむくみやすい。だから、今日みたいな休みの日でも足を労ってマッサージをしている。
何もすることがないと、一時間近く経っていることもある。
マッサージは自己流だけど、長年やっていると、どうすれば心地良いかわかってくる。
短いノックの後、きいろが入って来る。
「やっぱり、やってると思った。」
長風呂をしていたきいろは、身体中から湯気を出しながら部屋に入ってくる。
「Tシャツぐらい着てから入って来なよ。別にいいけど。」
小さめの花柄のバスタオルを巻きつけて、髪から雫を垂らしながらきいろは私の目の前に立ち尽くしている。
「だって、お風呂上がりは暑いんだもん。」
「また廊下に雫垂らしながら来たんじゃない?ジャスミンに怒られるよ。」
私は歓迎の印に小さなクッションをきいろに差し出す。
「うん。ねぇ、そろそろ私にもそのマッサージやってよ。」
きいろは入浴剤の甘い匂いを漂わせながら、クッションを受け取って言う。
「だからさ、いつも言うけど、私のマッサージは自己流だからきいちゃんにやっても気持ち良くないと思うよ。リラックスしたいなら、プロにやってもらいな。」
「お金かかるじゃん。それに、お風呂上がりにやってほしいんだもん。」
私はきいろの話を無視して自分のマッサージを続ける。
きいろは我儘だ。だけど、私はきいろの我儘が嫌いじゃない。
むしろ、自由奔放で羨ましいと思う。
「ドライヤー貸して。」
諦めたらしいきいろは、私の安いドライヤーで髪を乾かし始める。
高機能で高級な、私じゃとても手が出ないようなドライヤーを自分で持っているのに。
「何これ、全然乾かない。」
そう呟くと、きいろは部屋を出ていった。
きいろは猫みたいだ。
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