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「琥珀、どうしたの?一体何があったの?」
8ヶ月前の、1月のある日曜日、中学時代の友達の結婚式に参列しようとある教会に行ったら、同じく式に参列していた悠香に声をかけられた。
悠香とは中学時代もそんなに仲が良かったわけじゃない。
ただクラスメイトだったというだけだ。
だけど彼女は、心がボロボロになっていた私の中身を見抜いて声をかけてきた。
表面はなんでもないように取り繕えていると思っていた私は、心底驚いた。
だって、みんなと同じように着飾って美容院にまで行ってきた。リップはデパートに行って、高級ブランドのものを買って付けてきたくらいだ。
「こんなこと言うのも失礼かもしれないけど、目が死んでる。そのクマもどうしちゃったのよ。」
私はどうしていいかわからず、そこに立ち尽くして辛うじて涙だけは堪えた。
目が真っ赤になっている私を見て焦った悠香が
「大丈夫?式に出られる?もしよかったら、一緒に別のところに行こうか?」
思いがけない悠香の優しさが、心に沁みた。
「ご祝儀出しちゃったもの。式も披露宴も出るよ。」
貧乏性の私は、何とか笑って答えた。
「わかった。その気持ちは何となくわかる。でも、辛くなったら言って。披露宴が終わったら、どっかに行って私と2人で少し話そう。」
「うん、ありがとう。」
後から聞いたところによると、あの時の私は惨めすぎて見ていられなかった、と悠香が言った。
すごく寒い日で、式場までの道路脇の花壇の霜柱を、黒いハイヒールでいくつも潰した。
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