オレオレ詐欺

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洗い物が一段落した母さんが広間に顔を出す。 「秀幸は元気だったかい?」 「え、なんで?」 「今の電話、秀幸だったんだろ」 「そうだけど……。まあ、いつも通り元気だったかな」 死んでるのに元気っていうのも変だけど……。 「秀幸さ、和幸と話したいって言ってたんだよ。だから、四十九日の時に来るから話したら?って言っといたんだ」 「つーか、知ってたのかよ!オレオレ詐欺だと思った」 母さんは遠くを見つめながら、 「今までに何回かあったんだよ、秀幸からの電話。お父さんも話してるよ」 「そうなのかよ」 「最初はお父さんもオレオレ詐欺だと思ったみたいよ。元警察官の血が騒いだみたいで、親御さんに顔向けできるのか?って凄んでたけど秀幸本人だと気付いたら慌ててたけどね」 「ははっ、あの父さんが慌てたところ、見てみたかったな」 「ダメよ、お父さんにその話しちゃ。自分の息子のこと分からなかった、ってショック受けてたんだから」 「しょうがねえよ。まさか死んだ兄貴が電話してくるなんて思わねえだろ」 「今日で最後だって言ってたし、秀幸は最後に和幸と話せて良かったんじゃないの?」 「まあ、俺も話せて良かったなぁ」 それから何年も経った今でも、普段使わない黒電話は契約を継続され、広間の片隅にひっそりと置かれている。 いつかまた、金を要求しないオレオレ詐欺が掛かってきてもいいように。 了
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