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「大変申し訳ございません。ですが事実、指輪を受け取られたのでしょう?」
「…それは、あいつが押しつけていったから…」
あたしは服の上からそれに触れた。
あいつは、何も言わずにこんなに高価なものを押しつけ、あたしの反応もまともに聞かず勝手に納得して帰ってしまった。
あたしは好きの一言さえ言われてないし、この指輪だって「あげる」としか言われてない。
すぐに返そうと思ったけれど、お互いに忙しくてすっかりそんな機会も失った。
でも、明らかに本物のダイヤがふんだんにあしらわれたそれを失くすのが怖くて、こうしてネックレスチェーンに通して持ち歩いていたのだった。
「まゆか様は、なにがご不満なのですか?」
村崎はいつもの完璧な執事の笑顔を消し、真剣な目をしてあたしのことを見ていた。
なにが不満、とか……
「全部よ。あたしは、あいつのせいで友達のいない生活を送ってきたのよ?あたしはあいつの人形じゃない。あいつになにもかも決められた、自由のない生活が嫌だったの」
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