24人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
忘れもしない。あたしの学校生活はあいつに縛られ続けたものだった。
あいつはあたしが他の人間とつるむのを嫌がった。
あいつのせいでみんなあたしから離れていったし、友達と呼べる人でさえいなくなってしまった。今までのあたしの生活は、本当に寂しいものだった。
だから、あいつとの関係を捨てて、あいつのいないところで、新しい生活をすることに決めた。
いつあいつがあたしの企みに気づくかとびくびくしていたのだが、今のところ気づいた様子はない。
それにほっとする半面、どこかさみしさを感じる自分もいた。
あんなにあいつのそばにいるのが嫌だったのに、離れた瞬間こんな気持ちになるなんて。なんだか自分がよくわからない。
「まゆか様は、遼雅さまがお嫌いですか?」
村崎はいつもの完璧な執事の笑顔を浮かべたままそう訊いてきた。
正直あたしは面食らった。嫌いと言うのは簡単なことだ。
あたしの学校生活はあいつのせいでめちゃくちゃだった。
あいつがいなければいいと何度も思った。
けれど、なぜかその短い一言を口に出すことができなかった。
あいつのいない生活に憧れて、手に入れた。
それなのに、あたしは今、全然うれしくない。
念願がかなったのにすっきりしない。
むしろもやもやは強くなる一方だった。自分でも正体のわからない気持ちに戸惑う。
最初のコメントを投稿しよう!