1、そもそもあいつは…

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忘れもしない。あたしの学校生活はあいつに縛られ続けたものだった。 あいつはあたしが他の人間とつるむのを嫌がった。 あいつのせいでみんなあたしから離れていったし、友達と呼べる人でさえいなくなってしまった。今までのあたしの生活は、本当に寂しいものだった。   だから、あいつとの関係を捨てて、あいつのいないところで、新しい生活をすることに決めた。   いつあいつがあたしの企みに気づくかとびくびくしていたのだが、今のところ気づいた様子はない。 それにほっとする半面、どこかさみしさを感じる自分もいた。 あんなにあいつのそばにいるのが嫌だったのに、離れた瞬間こんな気持ちになるなんて。なんだか自分がよくわからない。 「まゆか様は、遼雅さまがお嫌いですか?」   村崎はいつもの完璧な執事の笑顔を浮かべたままそう訊いてきた。 正直あたしは面食らった。嫌いと言うのは簡単なことだ。 あたしの学校生活はあいつのせいでめちゃくちゃだった。 あいつがいなければいいと何度も思った。 けれど、なぜかその短い一言を口に出すことができなかった。 あいつのいない生活に憧れて、手に入れた。 それなのに、あたしは今、全然うれしくない。 念願がかなったのにすっきりしない。 むしろもやもやは強くなる一方だった。自分でも正体のわからない気持ちに戸惑う。
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