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「遼くんは……なにか、言ってた?」
焦るように帰ろうとする村崎に向かって、ついついあたしはそう訊いていた。
村崎の笑顔が一瞬強張った。
やっぱり、今の相手は遼くんで間違いないらしい。
村崎は考えるように視線を逸らしたあと、思い切ったように言った。
「……なにも」
冷たい声だった。いや、あたしがそう感じただけなのかもしれない。
あいつとの関わりを立つことを望んだのはあたしの方なのに、その言葉を聞いてあたしは目の奥がつんとなった。
小さい頃、口では強がりを言いながらも、あたしのうしろを付いてまわっていた遼くん。
いつもそうだった。遼くんは人一倍寂しがり屋で、でも、それを素直に言うことが出来なくて。強がってみせるけど、本当はいつも人の表情を窺っていた。
嫌われないか、離れていかないか。遼くんはいつもおびえていた。
急に父親が亡くなり、母親に捨てられた遼くんは、誰よりも孤独を恐れていた。
だからこそ、わがままを言ってあたし達の気を引こうとしていた。
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