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先に勝手に離れていったのはそっちのくせに、遼くんは急にこんなものを渡してきた。
物が物だったせいで、両親も村崎も勘違いするし、最悪だ。
ほんと、遼くんの気持ちが全然わからない。
「遼くん、あたしがここに進学すること知らないのかな?」
あたしは気が付くとそう訊いていた。
村崎に訊いても仕方のないことだと思いつつもそう訊いていた。
たしかに言ってはいない。でもだからといって、あいつがそれを知らないはずはない。
パパやママが言ってないわけないし、村崎があいつに黙って手伝いに来るはずがないのに。
…それなのに、なんで遼くんはなにも言ってこないの。
「私からは、なにも申し上げることはできません」
極めて事務的に村崎は答えた。
あたしはその言葉がすべてを物語っているように感じた。
「…そう」
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