1、そもそもあいつは…

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先に勝手に離れていったのはそっちのくせに、遼くんは急にこんなものを渡してきた。 物が物だったせいで、両親も村崎も勘違いするし、最悪だ。 ほんと、遼くんの気持ちが全然わからない。 「遼くん、あたしがここに進学すること知らないのかな?」   あたしは気が付くとそう訊いていた。 村崎に訊いても仕方のないことだと思いつつもそう訊いていた。   たしかに言ってはいない。でもだからといって、あいつがそれを知らないはずはない。 パパやママが言ってないわけないし、村崎があいつに黙って手伝いに来るはずがないのに。   …それなのに、なんで遼くんはなにも言ってこないの。 「私からは、なにも申し上げることはできません」   極めて事務的に村崎は答えた。 あたしはその言葉がすべてを物語っているように感じた。 「…そう」
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