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どんな子だろうとドキドキするあたしの目の前に現れたのは、キレイな男の子だった。
天使みたい、と思ったのも束の間、キレイな顔を歪ませて「やっぱり帰る」とその子は言った。
「ぼっちゃんのためにみなさんが歓迎会を開いてくださったのですよ」
オロオロと彼をなだめ、しかしながら「帰ってはいけない」と強く言わないその人は、おばあちゃんくらいの年齢の家政婦だった。
「坊ちゃんの好きなチョコレートケーキも作ってくださったようですよ。楽しみですね」
そう言われ彼は少し機嫌を直したようだ。
そんな彼が靴を脱ぎスリッパに履き替えるのを手伝っていたのが、まだ二十代半ばの村崎だった。
あたしは彼のそんな姿を見て、同い年なのに子供っぽい子、だと思った。
あたしがあんなふうにわがままを言ったら絶対にママに叱られる。
でもママも、パパも彼には何も言わない。
大人達はみんな、にこにこと笑顔を浮かべて彼のわがままを聞いてあげていた。
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