24人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
1、そもそもあいつは…
「着きましたよ、まゆかさま」
肩を叩かれ、あたしははっと目を覚ました。
なんだか、懐かしい夢を見ていた気がする。
見慣れない景色にここはどこだろうと周りを見回して、自分がリムジンの後部座席に座り、うたた寝をしていたことに気がついた。
普段は昼寝なんてしないのに、新生活のバタバタで疲れていたのだろうと思う。
見上げると、ドアの向こうにスーツ姿の男が優しい笑みを浮かべて立っていた。
彼の名前は村崎という。執事といういまどきめずらしい仕事ををしている。
執事と言っても漫画のように燕尾服などは着ていない。
その代わり180センチの長身に高級スーツをビシッと着こなし、白い手袋をはめて仕事をしている。
確か歳は35歳。なんでもそつなくこなす完璧な執事であり、愛妻家で今年小学校に上がる娘をもつパパでもある。
執事と言ってもあたしの執事ではなく、あたしの幼馴染に仕えている。
「ごめん、寝るつもりはなかったんだけど」
最初のコメントを投稿しよう!