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急に女の人の声が聞こえて、あたしは慌てて口を押さえた。
スーツ姿のそのお姉さんは、おそらく先程ホールの入口で見かけた案内係のお姉さんだ。
時計を確認すると確かにもう開始1分前。
こんなとこでゆっくりしている暇はない。
「行くよ」
掴まれていた手を振りほどいて、今度は逆に彼の手をとった。
「…話、終わってない」
手を引いても彼は歩き出そうとしなかった。
いくらひっぱっても女のあたしじゃ遼くんに敵うはずがない。
もうすぐ入学式が始まってしまうと言うのに、わがままなやつ。
…はぁ、とあたしはため息をつく。
「ちゃんと、入学式の後、話すから」
そう言うと、遼くんはしぶしぶといった様子で頷いてくれた。
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