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案の定、車は程なくして止まった。
家のことであれば“家”と言うだろうし、あそこだったら車で1時間近くかかる。こんな早く着くはずがない。
リムジンの窓から外を眺めたあたしはなんだか見覚えのある景色だな~とのんきに思っていたのだが、なぜ見覚えがあるのかに気づいて眩暈がした。
それは、カナと一緒に今朝歩いた景色と明らかに同じだった。
そして遼くんがあたしを案内したのは、あたしが住むマンションの最上階だった。
…まさか、まさかまさかまさか。
自分の部屋の隣、つまりカナとは逆方向のお隣。
角部屋のドアの前に立ち、暗証番号キーを入力している後ろ姿を見ているうちに冷や汗がどっと噴き出る。
「りょりょ遼くん、お引越ししたの…?」
生活感のないきれいな部屋。それがすべてを物語っていた。
このマンションの部屋は角部屋とそれ以外で間取りが異なる。
他の部屋が1DKなのに対して角部屋は2LDKとかなり広い。
このマンション自体学生向けにしてはキレイで広い方だが、角部屋はさらにお金持ちの学生向けのようだ。
同じデザインだけど異なる間取りの部屋に、促されるままあたしは靴を脱いで上がった。
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