1、そもそもあいつは…

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差し出された手を取り車から降りる。 目の前には7階建てのマンションが見える。 この春から通う予定の清凌(せいりょう)大学から歩いて5分にある学生向けのマンションで、住人のほとんどが清大生らしい。 1DKの学生らしい間取りの築浅マンション。 本当は今家族で住んでいるマンションからも電車で通学できる大学だが、一人暮らしがしてみたかったあたしは、反対するパパを1ヶ月かけて説得した。 一人暮らしにを認めたパパは、もっと広くて防犯もきっちりしたマンションにしようと言っていたけど、一目見て気に入ったのでここにしたのだった。 「お荷物は先に届いております。後で一緒にお片付けしましょうね」   村崎と初めて会ったのは10年前。小さい時から知っているからなのか、子供扱いされているだけなのかはわからないが、この男はこうして小さな子に言い聞かせるような話し方をしてくる時がある。 18歳のレディに向かって失礼な男だが、引っ越しの手伝いを申し出てくれたこともあり、今日ばかりは目を瞑っておこうと思う。 うちはママは運転できないし、パパは仕事が忙しいから、村崎がいなかったらあたしひとりで何にもできなかったことだと思う。
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