24人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
春休みの卒業旅行。旅先のホテルの一室で、なんでもないように渡されたもの。
遼くんにこんな素敵なものをもらって、内心舞い上がったあたしに対して、遼くんは甘い言葉のひとつもくれはしなかった。
凝った演出や、映画の名シーンのような言葉が欲しかったわけじゃない。
たった一言、「好き」って目を見て言ってくれるだけでも良かった。
飾り気のない言葉でも、遼くんが言ってくれるならあたしにはそれがなによりも甘い言葉になったはずなのに。
それが頭にきたあたしは、絶対こんなものなんか受け取らないと決めたのだ。
「受け取ったってことは、俺の気持ち受け入れてくれるんでしょ」
静かに笑みを浮かべてあたしのことを見下ろす遼くん。
この人は本当は全部知ってる。知ってて訊いてくるんだもん。
性格悪い。…そんな目で見られたら、もう勝てない。
「受け取ってなんか、ないもん…」
それでもあたしは最後の抵抗をしてみせる。
最初のコメントを投稿しよう!