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「行くわよ、村崎」
「かしこまりました」と村崎が言って、ふたりでエントランスに向かう。
その時、エレベーターが開いて女の子が出てきた。
小さくてふわふわの髪がかわいい女の子を見て、途端に昨日美容院で染めたばかりの自分の髪色が気になり出した。
大学生っぽい髪色にしたつもりだけど、浮いてないかな。変って思われないかなと心配ばかりが心を埋め尽くした。
幼稚舎から高校までエスカレーター式の学校に通っていたため、知り合いがひとりもいない生活は初めてだ。
友達の作り方もわからなくて、このままひとりぼっちで大学生活を送ることになったらどうしようと不安になる。
高校時代は、あいつのせいで女子からも男子からも避けられていた。
同じクラスの女の子達が週末にみんなで遊びに行ったり、男の子と一緒に登下校する姿を見てずっとうらやましかった。
「まゆかさま?」
村崎に名前を呼ばれ、はっと我に返る。
せっかく新しい生活が始まるのに、暗いことばかり考えていたら友達なんて作れない。大丈夫、なんとかなる!
大学でもあいつに振り回されるのかと心配していたけれど、違う大学になったし、知り合いのいないまっさらな環境で好きなように人間関係が築けるはずだ。
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